雨が見ていた~Painful love~
そして近くにあったジャージの上着をキョウちゃんの胸にグイッと押し付けると
「今は時間がない。さっさとコレ着てここから逃げる準備しろ。」
パパはそう言って、キョウちゃんを思いっきり睨みつけた。
「……。」
「……。」
何も発さないまま無言でにらみ合う二人を私はハラハラしながら見つめていた。
今にもなぐり合うんじゃないか
そんな雰囲気が二人にはあった。
「逃げる?
じゃぁこの後の騒ぎをどう収拾つけるんだよ。」
「それは俺が対処する。」
「……。」
「冷静になれ、響弥。
今はここに残ることが得策とは思えない。騒ぎを収めるには、多少の時間ってモンも必要なんだよ。」
パパがそう言った瞬間。キョウちゃんは何かを思案し、無言でパパを睨みつけていた。パパもキョウちゃんを真剣な瞳で見つめていた。
睨む
見つめる
そんな無言の時間がどれくらい続いたんだろう。
キョウちゃんは諦めたように大きくため息を吐き
「…わかった。
今はアンタの言いつけに従うよ。」
ジャージの上着を羽織ると、自分の近くにあったスポーツバックにロッカーの荷物をドカドカと詰め始めた。
水着にタオル
キャップにゴーグル
さまざまな道具を詰め始め、最後にこの場所には不似合いな茶色い大きな封筒をガサッとねじ込むと
「準備完了。
今すぐ出れるぞ。」
キョウちゃんはスポーツバックを肩にかけ、パパにそう宣言をした。
パパはニッコリ笑うと、
「ま、今のうちなら大丈夫だろ。
とにかく行くぞ。」
そう言って、キョウちゃんの腕をグイッと掴んだ。