雨が見ていた~Painful love~
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家へ着くまでの車の中で
パパもキョウちゃんも一言も言葉を発さなかった。
一時的に避難した首都高を降りて一般道を走っていても、BGMもない、会話もない車中は、まるでお通夜のよう。
なんだか気になって、ふと後ろを振り返るとキョウちゃんはただ窓の外を見ていた。
青空の中で楽しそうに街を歩く女の子たち
デートなのかな?
二人で手をつないで、仲睦まじそうに歩くカップル
そんな何気ない日常の一コマをキョウちゃんは、ただ見つめていた。
キョウちゃんが何を考え、何を思い、何を感じていたのかは、私にはわからない。
でも
――後悔してるのかもしれない…。
ふと、そう思った。
キョウちゃんは小さなころから1に競泳、2に競泳。
普通の人が当たり前に体験する遊びや、楽しみには背を向けて、競泳優先の毎日を歩んできたんだもん。
それでも、自分の1番は競泳で
オリンピックに出ることが目標で
そのために血を吐くような努力を続けてきたのに…今日の一瞬ですべてが無に帰ってしまった。
『俺は後悔はしていません。
あの行動を恥ずかしいとは思わない。』
キョウちゃんはマスコミに向かってそう啖呵を切ったけれど、本当のところはどうなんだろう。
ずっと一番だった競泳
ずっと一番大切にしていたものを壊してしまった、カレ
本当に…後悔していないんだろうか。