雨が見ていた~Painful love~


「それって…」

どういう意味…??




そう問いかけようとした瞬間




「楽しんで来いよ。
綾音に…よろしく。」





キョウちゃんは私の髪からパッと手を放すと、顔を背け、身をひるがえしてスタスタとリビングへと歩き出してしまった。




後悔してない

これでいい




その言葉に胸が痛くなるのはどうしてだろう。





あのキョウちゃんの見せた弱々しい、傷ついたような表情に、胸が締め付けられるのはどうしてなんだろう。





拓真くんが優しくしてくれると、心の中がほんわかして、温かくて、幸せな気持ちになるのに……キョウちゃんがあんな顔を見せると、どうしたらいいのかわからなくなる。



拓真くんが優しくしてくれると、それを返してあげたい、応えてあげたいと心底思う。



なのに、キョウちゃんがあんな顔をしたら…どうしていいのかわからなくなる。




どうにかしてあげたい
助けてあげたい



そう思うのに……
どうしたらいいのかわからない。




戸惑って、胸の中がザワザワして、頭の中の思考回路がショートする。




拓真くんにも綾音にもパパにも仁くんにも、困っていたら助けてあげたいと思うし、力になりたいと思う。




だけど……変なの。相手がキョウちゃんだと、どうしていいのかわからなくなる。




どうしたらいいのかが分からなくて、立ちすくんで、困ってしまう。



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