雨が見ていた~Painful love~


どうしてキョウちゃんにだけそうなるのか。


助けてあげたい、じゃなく
どうして困ってしまうのか。



ゆっくり考えれば
普通に考えれば行き着く先にある、たった1つの可能性。



だけど臆病な私はその可能性に行き着いた先にある、地獄のような葛藤が怖かった。




キョウちゃんは幼なじみで
私を傷つけた張本人で…
親友の彼氏


その答えに行き着いたら
修羅場からは逃げられない。


だからまた……
私は気づかないフリをしたんだ。





キョウちゃんの気持ちも
自分の気持ちも
全部全部ごまかしてしまえばいい。



何も見ない
何も気づかないフリをして
毎日を過ごせば
私は何一つ傷つかない。



悪者になりたくない
傷つきたくない
失いたくない



私はきっと……、卑怯で弱い。




『欲しいなら欲しがればいい』




パパはそう言うけれど、そんな難しいこと私にはできない。


気づかないふりさえすれば平和でいられる。
直面しなければ、私はきっと傷つかない。



欲しがるから傷つく
手を伸ばすから、絶望を知る。


じゃあ…さ??
何も求めなければ
何も欲しがらなければ
毎日平和に暮らしていけるってコトだよね??




それは私のポリシーであり
崩すことのできない人生のセオリー




そんなことを思いながら用意を終えて、玄関の外を出ると


♪Trrrrr♪


コートの中の携帯から着信を告げる音楽が鳴り響く。



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