雨が見ていた~Painful love~
冷たい風が吹きすさぶ外の空気に凍えながら、私はゆっくりと足を進める。
最寄駅の中目黒駅から代官山まで、電車で一駅。
乗車時間はたった1分。
代官山に着いて改札を出ると
「あ、美織~~!!
こっちこっち~!!」
ニコニコ顔の綾音に呼び止められる。
細身のジーンズに赤いパンプス
少し短めの黒いダッフルコートにモコモコのマフラーとニット帽を纏った綾音。
オンナノコの好きなカッコカワイイ服装は、私も大好きなファッション。
――いいな~。
美人は何着てもかわいいんだもん。
そんなことを思いながらテクテクと綾音に向かって歩いていくと
「久しぶりだねー、美織。」
綾音はにこにこ笑いながら私の肩をポンポンと叩く。
綾音とは電話やメールで連絡を取り合っていたものの、実際に会うのはあの“キョウちゃん雨の中に置き去り事件”以来。
あれからは毎日毎日キョウちゃんに振り回されて大変だったからなぁ……。
あの悪魔の顔を思い出しながらハァと大きくため息を吐くと
「ま。ここで立ち話もなんだし、美織のオススメのお店に行きましょ?このままじゃ凍えちゃうわ。」
綾音はそう言って私にいたずらっぽくほほ笑むと、ゆっくりと前に向かって歩き始めた。