雨が見ていた~Painful love~
昔から“こうだ!”と決めたら頑として曲げたりしない、キョウちゃんの難しい性格。
曲がったことが大嫌いで、バカがつくほど直球な生き方を好むキョウちゃん。
――こんな時までソレを貫き通さなくてもいいのに…。
明るい、華やかな誰もが憧れる、輝かしいアスリート人生を歩むはずだったキョウちゃん。
それを崩した原因は私にあって…。私が彼のアスリートとしての将来を壊したのだと思うと、その罪の重さにカラダが一気に重くなる。
呆然としながらパパの言葉を聞いていると
「このままだとアイツは破滅する。アイツの優れた才能が闇に埋もれて、全てなかったものになってしまう。だから……俺はアイツに言った。
誰を傷つけても構わない。
何を傷つけても構わない、とな。」
そう言ってパパはじっと私を見つめる。
目をそらさず、瞳の奥の奥を射抜くような静かな瞳をして
「後のことは俺が責任を持つ。
オマエは明日、真実をぶちまけろ。
アスリートとしての自分を守れ。俺は…響弥にそう言った。」
パパは私を諭すように、そう言った。
その言葉に、思わず胸の奥がギクリと疼く。
パパは知らない。
私とキョウちゃんの間に何があったのかなんて、何も知らない。
10年前の、あの雨の日のことも、吉良光太郎がしたであろう、脅迫もパパは何も知らない。
だけど……
何もかもお見通し、とでも言いたげなこの瞳を見ているとパパはすべての秘密を知っているのではないかと思えて、体中から冷や汗が流れ出る。