雨が見ていた~Painful love~



プールサイドに腰をかけ
膝から下を水につけたキョウちゃん。



「俺はオマエを抱きたい。
俺はオマエを好きだから心だけじゃなく体も欲しい。オマエの全部を征服したいと思ってる。」



真剣な瞳で
私が欲しいとハッキリ言葉にするキョウちゃん。



そんなカレに応えようと


「…だ、だから!!
いいよ。私、我慢するから。
さ、最後まですればいいよ…っ!!」


カラダを起こしながら
彼にそう訴えると


「…アホ。」


「…え??」


「それじゃ…あの日と何も変わらねーだろーが。」


そう言って
彼は私のオデコにピンッと軽くデコピンをお見舞いする。




あの日……
キョウちゃんが言う“あの日”は間違いなく10年前のあの日に違いない。




あの雨の日に
キョウちゃんの家で起こった、あの事件




きっとキョウちゃんはその日のコトを言っている。





今まで無意識のうちに避けていたこの話題。
二人っきりになっても避け続けていた、この話。


雨の日置き去り事件の日に怒りにまかせて、キョウちゃんに憤りをぶつけたことはあったけれど……。





ずっと避け続けていた“あの日”をキョウちゃんが口にしたことで、私の体にドキリと緊張が走る。




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