雨が見ていた~Painful love~
――うう…、水泳選手って目の毒だ……。
そんなことを思いながらポーっとキョウちゃんの顔を見てると
「オイ、クソ美。」
「あ、イタッ!」
キョウちゃんは私の頭をペシンと叩く。
な、なんで叩くの!?
意味が分からなくて恨みがましい目でキョウちゃんを見上げると
「俺様のスーツ姿にときめいちゃったか??」
「…え!?」
「バーカ、冗談だっつーの。」
そう言って
キョウちゃんはいたずらが成功した子供のようにクスクス笑う。
も、もう!!
パパも仁くんも近くにいるんだから変なこと言わないでよ!!
子どもみたいなキョウちゃんを見てると
『こっちは我慢の限界なんだよ……。』
イヤでも昨日のオトナなキョウちゃんを思い出しちゃって、こっちは一人でワタワタ百面相。
――う、うわぁっ!!
煩悩退散!
煩悩退散~~っ!!
こんな状況にもかかわらず、そんな落ち着きのないコトをしていると
「美織。」
キョウちゃんはマジメな顔して私の名前を呼んで、私の右手をギュウッと握る。
確かめるように
祈る様に強く私の手を握りしめた後
「……行ってくる。」
キョウちゃんは小さくそう呟く。
いつもとは違う
何か決意のようなモノを含んだその言葉に
「…うん、頑張って!
私はここで見守ってるから。どんなことがあっても見守ってるから。」
私はそうエールを送る。
その言葉に
「サンキュ。」
と呟いて
少しだけほほ笑んだ後
「よっしゃ、行くか。」
キョウちゃんとパパは真っ白なライトの光る会見場へと進んでいった。