雨が見ていた~Painful love~


ざわつく、場内
動揺する、マスコミの人達



完全に腹をくくったキョウちゃんの表情に、どこまでも冷静に腕組みをしたままクールな表情を崩さないパパ。




――え……??

いま、なんていったの??


いんたい……??


引退するって……、そう言ったの??!



頭も体も
全てがフリーズしてしまった、私自身。



ショックで手足が冷たくなっていく
指先が小刻みに震えだす



瞬き一つできず
ただ目を見開いたまま、キョウちゃんを見つめていると



「ど、どういうことですか!
理由を……理由を教えてください!」




記者の一人が
真っ青な顔をして、キョウちゃんに詰め寄る。





「俺は……故意に試合放棄をしました。スポーツマンとして、アスリートとして許されざることです。
ですが、それをわかっていながら、罪の重さを知りながらも俺はあの選択をしました。その時点で……スポーツマン失格です。この責任の取り方は引退以外にあり得ない、そう思っています。」





記者さんに向かって
キョウちゃんは汚れのない、まっすぐな瞳をして、こう語る。






「未練は……
未練はないんですか?!」




「……ないと言えば嘘になります。
俺にとって競泳は全てでしたから。」





「じゃあ、なぜ!
なぜ今、引退なんですか!!
今回の一件では何か陰謀があったのでは……という憶測も業界内では流れています。我々が知りたいのは真実であって、結論ではありません!!」




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