雨が見ていた~Painful love~


――キョウちゃん…!!


ありえないほどの緊張感の中でケラケラと笑うキョウちゃんを見つめながら、私は思う。




この人はなんてカッコいいんだろう。
なんてカッコいい男の人なんだろう。





乱暴で
ワガママで
自己中で
どこまでも自分に正直で
ウソのない生き方を好む、キョウちゃん。





そのまっすぐさに傷つけられたこともあった。
歪んだ愛の表現にどん底まで突き落とされたこともあった。



だけど……
こういうカレだから私は惹かれたんだ。



ズルい駆け引きとか
オトナの算段とか
そんなことが一切できずに
どこまでもまっすぐなキョウちゃんだから…私は彼に恋をした。




パパや仁くん
この場にいるオトナ達はキョウちゃんのこの子供染みた行動に呆れているに違いない。


だけど……
私はやっぱり好きなんだ。彼のこういうところが。





仁くんの手を握りしめながら
ワガママで自己中な私のカワイイ悪魔を見つめていると


「才能のあるヤツ程、あっさり自分を捨てられるんだよなー。」


仁くんはポツリとこう呟く。





――え??





その言葉に驚いて
仁くんをゆっくり振り返ると



「凡人程、自分がいる世界に固執する。
響弥と美織をハメた、吉良光太郎みたいにね。」



ニッコリとほほ笑みながら
そんな言葉を口にする。




「だけど……
才能のあるヤツ程自分の世界に固執しない。
そういうヤツは次のステージ、次のステージへと、どんどん飛び出して行くんだよ。響弥が引退するには若すぎるのかもしれないけど…次の人生を歩むには一番いいタイミングなのかもね。」



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