雨が見ていた~Painful love~
吉良光太郎……
「藤堂に言っといて。『いい負けっぷりだったよ。大満足。』…ってさ??」
キョウちゃんをこんなことに巻き込んだ、張本人。
「記者たちの中では藤堂選手と吉良選手の間に何か確執があったのでは…?という噂もあります。その真相をお伺いしたい。」
『藤堂もバカだよね。
たかがオンナ一人のために人生棒に振るなんて。』
『藤堂がああなった原因はね……??
全部全部、おねーさんのせいだよ。』
何度考えても許せない
吉良光太郎のあの卑怯な行動
思い出せば思い出すほど
煮えくり返る、腹の中
問題のど真ん中
吉良光太郎の問題を聞かれてキョウちゃんは一瞬グッと押し黙る。
そんなキョウちゃんの表情を見逃すことなく
「…真相をお聞かせください。」
記者はドンドン突っ込んで聞いてくる。
――なんで今聞くのよ…!!
ドキドキしながら
キョウちゃんはどう答えるんだろう…、そう思いながら私はキョウちゃんに“頑張れ”とエールを送る。
すると小さくため息を吐いて、キョウちゃんは小さく口を動かす。
「……キラは…最高のライバルでした。ウワサされるような確執は……。」
「…確執…は??」
直球でぶつけられた質問。
その質問を聞いて小さく拳を握り直すと
「…何もありませんよ。
アイツとはいろいろありましたが、今は“ありがとう”ですかね。失ったからこそ……得たものも沢山あった。」
キョウちゃんはそう答えた。
苦しそうに、でもどこか諦めたように、そう答えた。
そして…
不意に私を見つめる。
裏口にいて
記者の皆様からは見えない位置にいる私を確認して、フッと柔らかに微笑むと
「いろいろあったけど、感謝してます。
失ったもの、なくしたものは小さくはありませんが、それよりも何よりも大きなものをアイツには貰いましたから。」
そう言って
キョウちゃんは正面に視線を戻す。
「ありがとう。
ムカつくけど、キラにはそう言いたいです。」