雨が見ていた~Painful love~



生き地獄??
見えないキョウちゃんと闘う??


意味が分かんなくて首を捻ると



「これから大会で泳ぐたび、吉良は日本でなら余裕で勝てるだろうね。だけど国際大会ならどうだと思う??」




仁くんは私にそう聞き返す。





国際大会…
世界水泳とかオリンピックでってこと??





「ううーん。
入賞はしても優勝は難しいんじゃないかな…。」



悩みながらそう答えると



「そう、そこなんだよ。」



パチンと指を鳴らして、仁くんは満足そうに微笑む。






「国際大会で負けるたび、きっと吉良はこう思われるよ。“藤堂だったらもっといい成績だったかもしれないのに”ってね。」




――あ…!!




「実際のところはわからないよ?実際に響弥が試合に出てそうなるかどうかはわからない。でも……アイツはずっと響弥の陰に悩まされるんだ。レースに出るたび、ずっと…ね??」





そうか……
キョウちゃんは落ち目になって引退するわけじゃない。


選手として脂がのってきて
この前の日本選手権では失格になったけれど、世界記録を超えると思えるほどの泳ぎを見せた。


期待されたまま
選手として一番強い時期にキョウちゃんは引退する。




そうなったら……
否が応でも人は比べるよね?
吉良光太郎とキョウちゃんを――……


キラは負けるたびに比較される。
『藤堂だったらどうなっただろう。』


苦しいなぁ。
そんな毎日苦しすぎる。


見えない相手と
見えないプレッシャーと闘いながら過ごす毎日なんて、考えただけでゾッとする。



そんな毎日
拷問以外の何物でもないじゃないか。



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