雨が見ていた~Painful love~
自分の引退
そして今の気持ち
それらをすべて吐き出して
「とりあえず、今の目標は世界最速の一般人になることです。」
そうキョウちゃんがおどけた瞬間
会場からはドッと笑いが漏れる。
「え!?なんで笑うんですか!?
俺、真剣ですよ!!?」
――こらこら。
普通、そこは笑うとこなの。
ビックリしてるキミが変なの。
ココロの中で盛大に突込みを入れながら
私はキョウちゃんの言葉に耳を傾ける。
記者の質問に対して素直に真摯に答えて
まっすぐな瞳でキョウちゃんは語りだす。
これからは競泳の楽しさを伝える仕事の手伝いがしたい、ということ。これからも競泳と関わりながら生きていきたい、ということ。
それらの気持ちを熱く語りつくし、いつしか記者からの質問が途絶えた頃
「…以上…でいいですかね??」
キョウちゃんはパパを振り返る。
そしてパパが小さく頷くと
「今日は俺なんかの為に集まってくださって本当にありがとうございました。これからも俺の愛する競泳を温かく見守ってください。
今まで応援してくださった皆様、関係者の皆様すべてに心から感謝申し上げます。」
キョウちゃんは爽やかな笑顔と共に深々と頭を下げる。