雨が見ていた~Painful love~
10-ten.
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その後、時は過ぎて2か月。
世間は桜の咲く季節になり、キョウちゃんは無事に帝都体育大学を卒業。
「まったく…オマエは私が教えた中で最低で最高の生徒だったよ。」
そんな言葉を口にしながら、郷田先生はキョウちゃんを送り出した。
METSERAからの内定が取り消しになって、競泳選手も引退しちゃって、有名アスリートから一気に就職難民となってしまったキョウちゃんの現在の職業は…フリーター。
昼間はパパの会社SKプロダクションの清掃員(もちろんタダ働き。)そして夜は…龍おじさんの経営するSGスイミングスクールの清掃員として働いている。
「今日、自己新記録樹立したぞ!!」
「…え?!」
「誰にも言うなよ??
今日さ~仕事終わりに内緒で泳がせてもらったんだよ。超~~気持ちよかったぜ!?」
そしてキョウちゃんは仕事が終わった後、必ず一通り泳いでから自宅に戻る。
キョウちゃんはね?
内緒で泳いでる…なんて言ってるけど、きっと龍おじさんは全部お見通しだと思う。
それに……パパも。
パパも龍おじさんも素直じゃないから言わないけど、キョウちゃんから泳ぐ場所を奪わないように。選手としてのカンを鈍らせないように、二人はキョウちゃんがSGスイミングスクールで働けるように便宜を図ってくれたんじゃないかな。
あの時はピンとこなかったけど…
今となってはそう思う。