雨が見ていた~Painful love~
抱きしめられた手に、そっと自分の手を当てながら
「怖いけど……大丈夫。」
私は小さく、そう呟く。
「キョウちゃんとそうなるなら……この部屋がいい。」
「美織……」
「もう一度、やり直したいの。
あの雨の日から、もう一度やり直したい……。」
悲しい想い出を
苦しくツラい想い出を塗り替えたい。
もう一度、向き合いたい。
キョウちゃんと自分自身に。
それなら……
そうしたいなら他の場所じゃダメに思えた。
ここから生まれ変わりたい。
この場所からやり直したい――……
私は小さな決心を胸に
自分の体に回されたキョウちゃんの手のひらを握りしめる。
するとキョウちゃんは安心したようにハァ~と盛大にため息を吐いた後
「よかった。」
「……え??」
「俺も美織と同じこと考えてた。」
そう言ってキョウちゃんは私を世に言うお姫様抱っこのスタイルで抱き上げる。
彼の首に手を回して
いつになく真剣な彼の表情を見つめて
こんなに近くにいられるのは今日が最後なんだ、と思うと切なくなって
彼の厚い胸板にそっと顔を寄せると
「俺も美織との初めてはここがいいと思ってた。」
そう言って
キョウちゃんは私の髪にキスをする。