雨が見ていた~Painful love~
そんな私をよそに
「へ~え。
響弥も響弥なりに考えてんだね。」
「当たり前だろ?俺には競泳しかねぇからな。一応目下の目標は世界選手権で金メダル。」
「わお!
夢がでかいね。」
「アホか。俺にしてみたら、手を伸ばしたら叶うくらいの規模だっつーの。」
兄とキョウちゃんは、ふざけあいながらゲラゲラと笑う。
呆然と固まっている私をよそに、男達はどんどん話を進めていく。
そんな光景を瞬きもせず、ただ見つめていると
「とりあえず、響弥は今年大学卒業。来期はどこかの企業に所属しながら活動することになると思うんだけど……。響弥の活躍ぶりなら、多数の大手からオファーがかかるハズだ。美織にはその窓口として響弥にとって一番マストな企業を選んで欲しい。」
父はにっこりと笑いながら、私にそう告げる。
――そんな……!!
父のその一言に私は言い様のない焦りを感じて、肩が一気に重くなる。
もうこれきりだと思っていたのに。
切れたはずのキョウちゃんとの鎖が、自分の意思とは違うところで無理やりに繋がれて、私は恐怖と絶望で心の中が押しつぶされそうだ。