雨が見ていた~Painful love~
「……正気……??」
聞き間違いかと思った、その言葉は
「あぁ。
俺は嬉しいよ、美織。」
目の前の悪魔によって、あっさりと肯定される。
「信じられない……!!」
私の苦しみや
味あわされた、あの恐怖
その場だけじゃなく、それから後も続いている悪夢としか言えないような日々を“よかった”だなんてどうして言えるの?!
怒りでカラダがブルブル震える。
身体中の血という血が沸騰して、カラダが熱くて焦げそうだ。
必死に怒りを押さえながら、下唇をキュッと噛みしめていると
「美織が他の誰のものにもなってないって知って、俺は心底嬉しいね。」
「……は……??」
キョウちゃんは、こんな訳のわからない一言を口にする。
「あの日、俺はそうなればいいと思ってた。
死ぬほど苦しめばいいって。俺のつけた傷を一生忘れなければいいと思ってた。だからその願いが叶って、俺は嬉しいね。本望だよ、美織。」
信じられない…!!!
信じられない!!!!
その言葉を聞いた瞬間
「……恥知らず!!!」
私はキョウちゃんの頬を思いっきり、ひっぱたいていた。
流れる涙
落ちる雫
「ハァッ……ハァッ……!!」
怒りに任せた
荒い息
赤く腫れ上がる頬を押さえもせずに
「俺は謝ったりしねぇよ?美織。俺は俺にしかつけられない傷をオマエにつけられて、死ぬほど嬉しいね。」
悪魔はニヤリと微笑んだ。