雨が見ていた~Painful love~
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冷たい冷たい雨が降る中
目の前にいる美織は、怒りで肩をプルプルさせて俺を睨みつけている。
次第に激しくなる雨の音
行きかう車のヘッドライトに
重なり合う、クラクション
それらをBGMにしながら、
美織はただひたすらに俺を睨む。
「……。」
「……。」
ひどく怒った顔で俺を睨みつける、美織
――は~。めんどくせぇ。
あいつが何を求めてるのかはわかってる。
あの雨の日の謝罪だろう。
『悪かった』
『後悔してる』
その一言を言ったなら、馬鹿な美織は一瞬のうちに俺を許して、あの頃と同じようなくだらない関係に戻れることはわかってる。
だけど……悪いな、美織。
俺はもう戻りたくない。
あんなつまんねぇ関係に戻るなんて、考えただけでも虫唾が走る。ただの幼なじみに戻るだなんて、死んでもごめんだ。
「キョウちゃんなんて、大っ嫌い!!
もう二度と私の前に姿を現さないで!!!」
そう啖呵を切って
あの頃と同じような沼地オンナの形相のまま、前に前に歩き出す美織の背中を見ながら、俺はこう思ってた。
【嫌い、嫌いも好きのうち】
俺を忘れるなんて絶対に許さない。
もっと強烈に、何よりも強烈に俺を意識すればいい。
害もなさない男になるくらいなら、俺はお前に爪痕を残す男になった方が100倍マシだ。
おかしくなれ、美織。
俺のことを考えて……
もっと悩んで苦しんで、もっともっとおかしくなればいい。