つめたい海のカナリアと魔物
ちびを追いかけていた後ろの怪物が
ふいっとどこかへ行ってしまいました。
目の前の怪物だけが、
ちびのそばに残って、じっとちびを見つめています。
ちびは、
後ろにいた怪物は
この目の前の怪物にえものを──ちびを──ゆずったのだと思いました。
ちびは、この目の前の怪物に食べられてしまうのです。
逃げようと思っても、ちびにはもう体力がのこっていませんでした。
くるくると鳴いて、
ちびは氷の間にうかんで、
大きな大きなおそろしいまだらの怪物を見つめました。