NY恋物語
莉奈さんと空港で交わした
僅かな会話から
彼女が旅行社に勤めていることは
知っていた。
添乗業務もするというから
海外旅行にも慣れているはずだ。
今回はプライベートな旅行で
こちらに住む友人のところに
遊びに来たのだと聞いた。
その友だちとケンカでもしたのか?
それがもし男であったのなら
莉奈さんには悪いけど
成田からの12時間で
彼女に恋をしてしまった
俺にとっては絶好のチャンス。
姑息?
それがどうした?上等!だ。
姑息もつけ入るのも、大いに結構。
恋の切欠に拘りは要らない。
大体、姑息とか狡いとか言って
躊躇したりするから
せっかくの恋を逃して
後悔することになる。…というのは
過去の経験から学習済みだ。
男なら迷わず躊躇らわず
行く時はがーっと行かないと!
この広い街で偶然に再会したのは
神様からのクリスマスの
プレゼントかもしれない。
そんな事を考えていたら
不意に顔を上げた彼女が
ポツリと溢した。
「私……
自信がなくなってしまって」
まるで萎れたチューリップみたいに
くったりと項垂れた莉奈さんの
カップを包んでいる華奢な両手を
俺は自分の両手で
そっと包み込んだ。