NY恋物語
「莉奈さん」
「はい・・・」
「腹、減ってませんか?」
「え?」
「人間、腹が減ると どうしても
ネガティブな思考になるもんです」
「そういえば・・・少し」
「よし。何か食べに行きましょう!
ご馳走しますよ」
「鳳さん」
席を立ちかけた俺を
莉奈さんが制するように
呼び止めた。
「どうして・・・
こんなに優しくしてくださるの?」
飛行機で隣になっただけの女に、と
吐き捨てるように
小さく呟いた莉奈さんの手を
俺は両手でもう一度 包んだ。
「迷惑ですか?」
「いいえ!
とても嬉しいですけど・・・でも」
「なら、いいんですよ」
「どうして?」
「男ってね、泣いている女の子を
放って置けない生き物なんです」
「・・・・・・」
「女の子の前ではいつだって
かっこいいヒーローで
いたいものなんですよ」
片手を腰にあて、もう片方の腕で
ヒーローの決めポーズをした俺を
クスクスと小さく笑った莉奈さんの
カップを包む指の力が
ふっと弛んだ。