NY恋物語

「……好きなんです。
まだ会って2日も経ってないのに
信じてもらえないかもしれないけど」


それにはどう答えていいのか分からなかった。
黙って次の彼の言葉を待った。


「一目惚れです」


潔く断言されて、ますます答えに困った私は
やっぱり黙っているしかなかった。


「飛行機の中で貴女を見た瞬間に
直感したんです。好きになるのに
理由も時間も要らないって
本当だったんだなと思いました。
でも話しかけるとなると別。
切欠は必要でしょう?なのに切欠って
意外となくて。焦りまくりましたよ」

「そんな風には見えなかったけど…。
熱心に読書してたし、食後はよく寝てたし」

「ぶっちゃけ、本なんて
ほとんど読んでいるフリでした。
声をかける切欠はないものかとそればっかり。
寝たのは…これは抗い難い欲求なので
仕方ありません」


あはは、と自嘲した鳳と目を合わせて
私も小さく笑った。


「10時間のフライトが
あんなに短く感じたのは初めてだったな。
まだ着くな、なんて思ったのも」


艶をおびた鳳の瞳が私を見つめた。
捕らわれ、反らせなくなりそうな
彼の視線から逃れたくて
私は彼の胸に額をつけた。
その私の頭を鳳の手が優しく撫でた。


「結局、話らしい話ができたのは着陸直前で
脈もなさそうだったから
空港で別れるときにあきらめたんです。
だけど…街中で貴女に再会したでしょう?
これはもう運命に違いないって思って」


抱きしめていた私の体を少し離した鳳は
その両掌で私の頬をそっと包んだ。


「しかも 貴女、泣いてた。
貴女を助けて貴女のヒーローになるチャンスを
神様がくれたんだと思った…」


私を見下ろす彼の瞳が甘やかに細められた。

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