NY恋物語
「莉奈さん。俺じゃダメですか?」
「え?」
「俺は莉奈さんの……
貴女だけのヒーローになりたい」
視線を合わせたままでいるのに
耐えられなくなった私は
俯き加減に目を逸らした。
「莉奈さん!」
その呼びかけは目を逸らすことを
許さない、自分を見ろとでもいうように
力の篭った声だった。
鳳は俯いた私の顔を上向かせると
視線を捕らえ直した。
「俺は… 俺なら海を越えて
会いにきてくれた貴女を
一人になんてさせない。泣かせたりしない!」
その一言が胸に沁みた。
沁みた言葉に揺らいだ心は
鳳の視線を逸らそうとはしなかった。
彼の真摯な想いの篭った瞳に
自分が映るのが見えそうなほど
視線が近づいた。
今、瞼を閉じればきっと……
胸が張り裂けんばかりの切なさに
耐える夜から解放される。
秀明に逢いたいときに逢えない寂しさは
時に恋しさを越えて痛いほどだ。
「莉奈さん…」
呼ばれるままに誘われるままに応えれば
この大きな胸の中で包まれて
愛される幸せだけを感じて過すことができる。
「好きだ」
紙一重の、あるかないかの距離で囁く
吐息の熱さに意識が蕩けてしまいそうだ。
「貴女が好きだ……好きだ」
はらはらと花びらが舞い散るように
額に瞼に彼の吐息と唇が落ちる。
「莉奈…」
秀明じゃない男性の声が
私の名を呼び捨てにするのを
聞いたのは何時以来だろう。
莉奈、と声にならない声で囁いた鳳の唇が
私のそれに触れかけた。
あぁ……