NY恋物語

「でも彼女は厳しいぞ。
俺に対してもかなりキツイ」

「そうなの?」

「ああ。テニスに関してもそうだが…
莉奈に関しては特にな」

「私?」

「ああ。何年も日本で待たせてるなんて
最低だと散々言われているよ」

「本当?」

「そのことに関してだけは
卑怯者だの甲斐性なしだのエゴイストだの
悪の権化みたいな言われようだぞ」



秀明に向ってそんな暴言を吐けるのは
世界広しと言えどもヨーコくらいなものだろう。


でも驚いた。


まさか私の知らないところで
そんな風に私に対しての
心配りをしてくれていたなんて。
今日の彼女の刺々しい言動からは
とても想像できない。
けれどそういうことなら前言撤回。
彼女とは案外いい友達になれるかもしれない。


「俺達が離れて暮らしている事が
理解できないらしい」


愛しているから共に暮らしたい。
共に暮らせば家族となって
いつもそばで支えあいながら生きていく。
そんな家族ありきの人生観を
当然の事として育ったヨーコには
仕事ありきの遠距離恋愛や単身赴任なんて
到底理解できない事なのだろう。



「まぁ…今回はちょっと別の理由もあるらしいが」

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