NY恋物語

夢うつつな心地のまま
シーツに包まる私を
背中からすっぽりと覆うように
抱き起した秀明は
目の前に金色の包みを差し出した。


「なに?」

「開けて」


クリスマスカラーのリボンを解き
包みを開くと中に在ったのは
仕かけ絵本が二冊。
一冊は、うさぎを追いかけ
おとぎの国に旅をした少女のお話。
そしてもう一冊は
今にも叫び声を上げそうな
恐竜達のジュラシックパーク。


「これロバート・サブタの、ね?!」

「ああ」


この作者は別名、紙の魔術師とも呼ばれ
その作品の迫力と美しさは
子どもから大人まで
見るものを魅了するとの評判通り
私もとあるデパートでの展覧会で見かけて
虜になった。けれどその時に本を買いそびれて
悔しい思いをした、と前に秀明に話た事があった。


「前に話したの、覚えててくれたの?」

「ああ。すごく残念そうにしていただろう?」


だから、と秀明は小さく頷いて微笑んだ。


「ありがとう!」


体の向きを変えて
彼の首に両手を回してキスをしたのは
お礼の気持ちのはずだったのに……
そのまま強く抱きしめられて
主導を奪われたキスは
徐々に深く熱を孕んだそれに
変わっていった。
押し返した秀明の胸が
ようやく離れた頃には
息も上がってしまっていた。


「もう!話ができないでしょ!」


私が秀明を軽く睨んでも
彼は愉しげな微笑みで応えるだけだった。



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