NY恋物語

「ふぅ」


ソファーに深く腰を下ろすと
無意識にため息がでた。
空港からここまでの
ほんの短い時間に見聞きした事実は
秀明がとても遠い存在になってしまった事の
揺ぎ無い証明のようにも思えた。


確かに昔から常に注目を集める
稀有な存在ではあったけれど
それはあくまで学校内や都内
せいぜい関東圏の
ローカルな範囲でのこと。


でも今は もう違う。


大使館の宴、高級住宅 押し寄せる記者達 
アメリカンヒーロー…
これまでとは何もかも違いすぎる。
本人はきっとそんな事を
意識してはいないだろうし
望んでもいないだろうけれど・・・


これが世界レベルに達した者の日常なのだ。


そんな秀明に こんな普通の私が
本当に相応しいのだろうか…。
「恋人」として
相応しい存在なのだろうか…


切ない思いでふと見た先の
小さなサイドテーブルに見つけた
秀明とヨーコの写真。
トロフィを抱える秀明の様子から
何かの大会で優勝した時のものだろう。
笑顔で互いの背中に片手を回したその姿と
『最高のパートナー』と書き込まれた文字に
胸が締め付けられた。


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