恋の傷を癒すのは、恋?
恐る恐る声の主を確認する。
「伊原くん」
予想通りそこに居たのは、高校2年間同じクラスと演劇部の伊原くん。
手には軽く丸めた台本を持ち、視線は私がさっきまで見ていた方を向いている。
何故か入学当時から、ちょこちょこ絡んでくるんだよね。
そして、ちょっと意地悪。
でも、たまーに、優しい。
不思議な人。
「先輩に彼女できて、もう1年だろ? いい加減、諦めろよ!」
えっ?
驚いて伊原くんを見ていると、急にこっちを向いたので視線がぶつかった。