愛を叫んで地に堕ちて〈全イラスト41枚つき恋愛ホラー〉
 更科高校の演劇部公演は、九月だ。

 もう、あまり時間がない。

 ここで衣装を汚してしまったら、大変なことになる。

 真珠は、自分が着ている白いタキシードに目立ったしわが無いことを確認して、ほっと溜息をついた。

 大丈夫だ。

 ……そう、安心した途端、また眠くなる。

「ふぁーーあ」

 そう、真珠が大きなあくびをしたとき。

 凪が、笑って真珠におやつを差し出した。

「ねぇ、真珠。これでも食べて、目を覚ましてよ」

「クッピーわらび餅? 何これ?
 わたし、こんなの食べたことないわ」

 凪の手の中にある、見かけ無いパッケージに真珠が首を傾げれば。

 凪は、意味無く胸を張った。

「実は、俺もなんだけどさ。
 そこの店で見かけたとき何か『呼んでる』気がしてさ。
 思わず衝動買いしたんだ。



 味は、謎。
 でも、美味くても、まずくても、目は覚めると思わないか?」

「あははは」
 


  
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