愛を叫んで地に堕ちて〈全イラスト41枚つき恋愛ホラー〉
「じゃ、なんで……!」
「俺には、実体が無いからです。
ただの意識、思念の塊なので、生身の人間に触れられると、この姿を保っていられません。
……そして。
もう一度、この姿を作り上げられるほど、俺の力は残っていない……」
「……は?」
彼の言っていることの意味が判らず。
首を傾げた母親に、男は微笑んだ。
「俺のカラダは、ここから離れた、マンションの浴室にあります。
あなたの目の前に居るのは、生き霊ですよ。
……もっとも、もうすぐ命の尽きる、死にかけですが」
「は……あ?」
いきなり生き霊、と言われても、目の前に居る男には、足も影もあり、人間に見える。
ただ『普通の』と言い難いのは、その、整い過ぎる顔と左手首から流れる血。
そして、彼がしゃべっている内容ぐらいだ。
ますますワケが判らずに、怪訝な顔をする母親に、青年はもう一度、微笑むと。
男は、次に、母親が押していたベビーカーに目を向けた。
「本当は、すれ違いざまにちらっと見るだけにしようと思ったけれど。
母上に引き止められてしまったよ。
だから君に、挨拶をして、逝くことにするね」
「……え?」
「俺には、実体が無いからです。
ただの意識、思念の塊なので、生身の人間に触れられると、この姿を保っていられません。
……そして。
もう一度、この姿を作り上げられるほど、俺の力は残っていない……」
「……は?」
彼の言っていることの意味が判らず。
首を傾げた母親に、男は微笑んだ。
「俺のカラダは、ここから離れた、マンションの浴室にあります。
あなたの目の前に居るのは、生き霊ですよ。
……もっとも、もうすぐ命の尽きる、死にかけですが」
「は……あ?」
いきなり生き霊、と言われても、目の前に居る男には、足も影もあり、人間に見える。
ただ『普通の』と言い難いのは、その、整い過ぎる顔と左手首から流れる血。
そして、彼がしゃべっている内容ぐらいだ。
ますますワケが判らずに、怪訝な顔をする母親に、青年はもう一度、微笑むと。
男は、次に、母親が押していたベビーカーに目を向けた。
「本当は、すれ違いざまにちらっと見るだけにしようと思ったけれど。
母上に引き止められてしまったよ。
だから君に、挨拶をして、逝くことにするね」
「……え?」