愛を叫んで地に堕ちて〈全イラスト41枚つき恋愛ホラー〉
 では『生き霊』だと言う、この男が『死に間際』に会いたいと願ったのは、自分の娘だったのか。

 けれども。

「ちょっと!
 わたしの生後ニヶ月の娘に何の用よ!
 わたしだって、あなたのことなんて、知らないわ!」

 そう、叫ぶ母親の声を無視して、青年は、ベビーカーの前にひざまずいた。

 そして、赤ん坊の目を見ながら、つぶやく。

「真珠(しんじゅ)……真珠。
 俺だよ。
 茂吉(もきち)だよ?
 覚えてる?
 俺、ずっと待ってたけれど、お前、来るの遅いよ。
 三十四年も、待ったじゃないか。
 こんなに年が離れてちゃ、お前に愛は、ささやけないよ。
 寂しさに耐えかねて、七日前に他の女を抱いてしまったこの手では。
 汚れ過ぎてて、キレイな真珠を抱けないよ。
 ……だから一度、死んで来るね。
 俺、急いで生まれ帰って来るから、今度こそ、待ってて?
 次は、君の方がお姉さんになってしまうけれど、少しぐらいなら、構わないよね?」

「ちょっと、なんで娘の名前、知ってるのよ!
 しかも三十四年って何よ!?
 あなた、十七才ぐらいじゃないの?
 もっと上でも、せいぜい二十代じゃ……!」

 彼の信じられない言葉の数々に、そして。

 訳の判らない自殺の理由に、母親が、パニックになりかけた時だった。
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