愛を叫んで地に堕ちて〈全イラスト41枚つき恋愛ホラー〉
「……も……き……ち」

 凪の前世は、確かに茂吉だった。

 切ない記憶は、確かな核心となって真珠の胸を打った。

 愛してる?

 わたしだって、愛してた。

 遥かな過去に、このヒトだけを、愛してた。

 そして、真珠はふらふらと。

 差し伸ばされた凪の手が導くままに。

 凪の腰に、自分の手をまわして、抱きしめて……抱きしめられて。

 真珠は、気づいてしまった。



 このヒトは。

 前世では確かに、愛しい茂吉だったかもしれない。

 けれど『今』は違うことに。

 真珠の知ってる匂いがしない。

 顔つきも、カラダつきも『茂吉』じゃない!

 真珠と同じクラスで、演劇部の『海野凪』だ。
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