愛を叫んで地に堕ちて〈全イラスト41枚つき恋愛ホラー〉
母親が、あっと思う間もなく。
青年は、ベビーカーの赤ん坊に素早く首を伸ばすと、その唇に、自分の唇を押し当てた。
途端に。
男の身体が崩れてゆく。
生身の人間に触ると、その姿を保てない、と言うことは¸本当らしかった。
まるで、真夏の海岸で作った砂の城が、波にさらわれてゆくように。
彼が口付けた先から、彼を形成するモノが、闇の彼方へ消えてゆく。
まず最初に、彼の頭が崩れて行ったために。
一瞬で、首無しになったように見える青年を見て、母親は悲鳴を上げた。
きゃーーーっ!
魂消(たまげ)るほどに大きな、その悲鳴は。
一段と酷くなった蝉時雨に紛れて、誰の耳にも、届かなかった。
平日の昼下がり。
夏休みには、まだまだ遠い住宅街には、いつの間にか、他に人影は無く。
一連の出来事は、まるで。
真夏に起きた、白昼夢。
夢、幻の類(たぐい)にも見えた。
青年は、ベビーカーの赤ん坊に素早く首を伸ばすと、その唇に、自分の唇を押し当てた。
途端に。
男の身体が崩れてゆく。
生身の人間に触ると、その姿を保てない、と言うことは¸本当らしかった。
まるで、真夏の海岸で作った砂の城が、波にさらわれてゆくように。
彼が口付けた先から、彼を形成するモノが、闇の彼方へ消えてゆく。
まず最初に、彼の頭が崩れて行ったために。
一瞬で、首無しになったように見える青年を見て、母親は悲鳴を上げた。
きゃーーーっ!
魂消(たまげ)るほどに大きな、その悲鳴は。
一段と酷くなった蝉時雨に紛れて、誰の耳にも、届かなかった。
平日の昼下がり。
夏休みには、まだまだ遠い住宅街には、いつの間にか、他に人影は無く。
一連の出来事は、まるで。
真夏に起きた、白昼夢。
夢、幻の類(たぐい)にも見えた。