愛を叫んで地に堕ちて〈全イラスト41枚つき恋愛ホラー〉
「……海野……てめー……!
 オレの女に……手ぇ……出すんじゃねぇよ!!」

 がたん、と鳴った盛大な物音に。

 海野凪は真珠の服を脱がす手を止めて。

 真珠は、抵抗する手に力を込めたまま。

 はっと、見上げたその先に、勇斗が、いた。

 血まみれの、姿で。

「きゃー! 勇斗っ! 勇斗、大丈……」

 その、勇斗が流している血の量に。

 今自分がどんな状況かも忘れて、改めて叫び声を上げようとした真珠の口を押さえて、凪が言った。

「なんだ、お前、生きてたんだ。
 ……やっぱり、留めを刺しておけばよかった」

 ……え……っ

 凪にのしかかられたまま、真珠はその言葉に目を見張った。

 とどめ、って!

 勇斗をこんな風に傷つけたのは……海野君だってこと!?

 そう言えば、さっき。

 ここに来るとき凪が手に持っていた『私物』の日本刀は『茂吉』の刀だったから真珠に見覚えがあったのだ。

 その刀が本物だとしたら。

 茂吉が剣一本で身を立てた以上、刀は本当に身を切ることが出来る真剣のはずで。

 微かに感じた生臭い血の臭いは、勇斗の……血!
 
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