愛を叫んで地に堕ちて〈全イラスト41枚つき恋愛ホラー〉
 その社の屋根裏に。

 凪は昔、自分が茂吉、と名乗っていたころに手に入れた日本刀を隠して来たのだ。

 日本刀は、さっき勇斗と、真珠を斬り捨てて来た凶器だ。

 今頃、演劇部の合宿に使っていた、勇斗の別荘では。

 その主の勇斗と真珠の遺体が見つかって、大騒ぎになっている頃だった。

 殺人事件を起こし。

 部員を三人失ってしまったから。

 今まで頑張って来た、九月公演どころか、演劇部存続さえ危ぶまれる状態になるだろう。

 一応。

 仲間の部員には、悪いとは、思ったけれども。

 仕方がなかったんだ、と凪は、ため息をついた。

 なにしろ。

 前世が、茂吉であるはずの自分を、真珠が愛してくれなかったのだ。

 茂吉と、真珠。

 二人で、心中することになったあの時。

 来世では、必ず夫婦になろうと、固く誓ったはずだったのに。

 この世で邪魔な勇斗の息の根を、完全に止めても、真珠は、自分を受け入れてくれなかったのだ。

 一度は、勇斗に首に跡がつくまで締められて、全部を思い出したはずなのに。

 都合が悪いことは、すぐに忘れ。

 ……一体、どこがマズかったのだろうと、凪は、首を傾げた。
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