Liars' clovers
 手を差し伸べると、エミルはためらいがちにぼくの手を取った。

 そのままゆっくり窓の外に導く。

 窓枠から片足ずつ芝生の上に降り立った彼女は、まるで一仕事終えたかのようにため息をついた。

「……窓を出入口にしたのははじめて」

 うしろめたそうに、それでも誇らしげに窓を振り返る。

 そのまま気持ちよさそうに空を見上げると、怪訝そうに瞬いた。

「あの空……あそこだけ色がついてるわ」

 視線の先にはいまだに鮮やかな虹が浮かんでいる。

「色って――もしかして虹のこと?」

「あれが、虹? とても七色には見えないけれど……」

 たしかに色の境界はあいまいで、目をこらして数えても五色くらいしか確認できない。

 でも虹とはそういうものなのだと、普通なら教わらなくても知っている。

 彼女の質問を不思議に思いつつも、ぼくは一生懸命エミルが納得できるような答えを考えた。

「うーん……よーく見たら七色あるんだよ、きっと」

「なるほど。ずいぶん薄いものね」

 月並みな表現に我ながら軽く落ち込んだが、そんないたらない説明でもエミルは素直に聞いていた。
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