Liars' clovers

 いまぼくらがいる隙間は、子どもがなんとか入れる程度の広さで、音でもしないかぎり大人は隙間の存在にすら気付かない。

 前に、いきなりここら飛び出て通行人を驚かすといういたずらをしたことがあったが、大人相手に大成功だった。

 子どもは逆にこんな隙間が目につくらしく、誰一人驚かすことはできなかったけれど。

 建物の影からこっそり通りをうかがい、すぐに身をひく。一瞬の間に確認できた影は五つ。

 そのうち三人は話に夢中で、一人は通りを歩き去ろうとするところだった。

 最後の一人はもう少しでぼくらの前を横切る、といった距離にいる。



 ──子どもだった。

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