Liars' clovers
「まずいな……」

 経験からして子どもに見つかる確率は百パーセントだ。

 急いで引き返すことはできるが、引き返したその先で別な誰かに見つかる可能性がある。

 なにかいい方法はないかと考えをめぐらせても、動揺した頭では何も浮かばなかった。

 足音が近づいてくる。

 舗装されていない道を踏みしめるざりざりという音が、ぼくの心臓を急かした。

 ──どうしよう。
 どうにか彼女を隠さなくちゃ。
 だめだどうしようもない。

 ぐるぐると無意味な言葉ばかりが浮かんでは消えた。


 音からしてあと数歩で目の前を横切るだろう。

 ぼくは覚悟を決め、小声で叫んだ。

「──かがんで!」
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