Liars' clovers
 再度、ごめんと謝りながらさりげなくエミルがいる隙間を背にかばう。背後で身をすくめる気配がした。

 大丈夫だと言う代わりに背中で片手を振ると、その意味が伝わったのか、彼女がほんの少し笑った気がした。

「んじゃあオレもう行くから」

 無言で交わされるぼくらのやりとりに気付く様子はなく、彼は服についた砂を軽くはらう。

「おつかいの途中なんだ」

 誇らしげにそういうと、あっという間に通りの向こうへ駆けていった。

 長かった緊張が解け、ぎゅっとひざを抱いていたエミルがそろそろと立ち上がる。

「もう、いい? 大丈夫?」

 ぼくはひとつ笑って彼女の手をとる。

 通りにあった人影はいつの間にかすべて消えていた。


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