Liars' clovers
 ぼくの返事に安堵したのか、エミルの態度がいくぶんやわらぐ。

「よかった。でもね、ママには出かけることを知られちゃいけないの」

 母はとても心配性で外出することにうるさいのだとエミルは言った。

 母親の過保護ぶりを見かねた父親が『空気のいい田舎なら体に障ることもないだろうから』と先に母子を住まわせた。

 本人も都での仕事が片付いたらこの村に来るらしい。

「パパは外出を許してくれてるし、昔と比べて体もずっと健康になったのよ? それでもママは、外はホコリっぽいからダメだって」

 エミルは困ったように笑った。その仕草から、母親を嫌っているわけではないことがわかる。


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