Liars' clovers
「だから、ママには内緒ね?」

 人差し指を立てるエミルに頷き、これからについて考える。

 よそ者が珍しいこの村では、エミルが村の誰か一人にでも見つかれば、すぐに彼女の母親に伝わってしまうだろう。

「だったら丘はさけたほうがいいよ。みんなの遊び場になってるから」

 みんな、というのは村の子どもたちのことだ。

 ひらけた丘は走り回るには最適だし、陽当たりが良く花も咲いているので子どもなら男女問わず自然と丘に集まる。

「ほかに行けそうなところはある?」

「うーん、森なら近いし人はいないだろうけど……」

「けど……?」

 ひとつの心配ごとが頭をかすめた。しかしすぐにそれを打ち消す。

 きっと大丈夫だろう。半ば無理やりにそう思い込んで。

「――ううん、なんでもない。行こう森へ」

< 9 / 34 >

この作品をシェア

pagetop