また、キミの隣で…
え、誰って…。
何かの冗談だよね?
それとも私の聞き間違い?
「な、何言ってるの、護?
私だよ?
花蓮」
「…ごめん、分からない…」
「そんな…。
護、自分のことは分かる?」
「…分からない。
何も、思い出せない…」
「そう…」
まさかこれって、記憶喪失?
護が、私のこと忘れちゃうなんて…。
「ごめん、ちょっとトイレに行って来るね…」
「うん…」
そう告げて病室から出る時、護をチラッと見ると、また天井を見ながらボーとしていた。
「護…」
パタンっと扉を閉める。
その時、涙が溢れ出した。
ズルズルと壁にもたれて落ちていく腰。
「…うっ…護…。
何で私のこと忘れちゃったの?
ずっと一緒にいようって言ってくれたのに…。
嘘つき…」
両手で顔を覆って、小さく泣いた。
あれから10分。
なかなか涙が止まらなくてこんなにも時間がたってしまった。
トイレに行くってだけ伝えからなぁ…。
勘違いされてないといいんだけど…。
ちゃんとトイレで目が腫れてないかも確認したし、大丈夫。
私が落ち込んだままだと、護に気を使わせちゃうかもしれないし、なるべく笑顔笑顔…。
「護〜。
ごめん、遅くなった…」
部屋に入ると、護はすでに目を閉じて眠りについていた。