ウィニングショット
それから、私は単崎君と別れ、野球と関わることを恐れていた。
野球にかかわる思い出をすべて消し去ろうとした。
だけど杉原君の相方ともいえるキャッチャーの遠藤君は私に近づいてきた。
「…なに?」
溢れそうになる涙をこらえながら、そういうのが精いっぱいだった。
「菊池…。杉原が死んでから一度も笑ってねーじゃん。」
「当たり前でしょ?!最終的に私がちゃんとマネージャーとして…」
たくさんの言葉を吐きそうになった口を遠藤君は抑えた。
「じゃぁ、高校でも野球やったらどうだ?」
落ち着いた口調でこう続けた。
「杉原は野球が好きだった。お前のことはもっと大好きだった。
だから…わかるだろ?」
遠藤君の目も潤んでいた。
自分の好きな人には笑っていてほしい。
「うん」
この時、私は杉原君が死んで以来、初めて泣き、初めて笑ました。