ナツメ
「痛い…」

今までなにをされても痛いなどとは言わなかったのに、それはわたしを泣かせた。

思いきり額を床にぶつけて痛さの余り、わたしは転がったままで子供のようにしゃくりあげた。

酷い。痛い。
こんなのってない。

泣きながら視線だけでナツメの姿を追う。

ナツメは退いた格好のままで、わたしを呆然と見つめている。

どうしてそんな目で見るの。

ナツメが冷静を欠いている。

いつもなら辛辣な言葉でわたしをなじって抉って、嫌でも言うことを聞かせるナツメが言葉をなくしている。

どうしたらいいのかわからずに戸惑っている。
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