ナツメ
そして、朝にコーヒーを飲む度に、ただ一度だけのキスを思いだすだろう。

思いだすには、あまりに短いキスだったけれど。


左手に箸を持った。
その、わたしの仕草をナツメが驚いた顔で見ている。

ああ、そうか。

わたしは、スプーンやフォークは右利きだけれど、箸だけは何故か左。
今までナツメの前で箸を持ったことはない。

こんなに長い時間一緒にいて、そんなことも知らないなんて。

昨日までは、ナツメが食事を手伝ってくれた。

きっと今朝もそのつもりだったんだろう。
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