ナツメ
だんだんとまともな思考が戻ってくる。

明日から仕事に行かなくてはならないとか、帰ったら部屋の空気を入れ替えないととか、夏物の服をださなきゃなとか。


それから今夜はなにを食べようかとか。


笑えた。

死にたいと、そう思っていた自分が、食事は拷問だと思っていた自分が、生きる為に今夜からのことを考えている。


修のことを考えてみる。
もう顔もよく思いだせない。

忘れはしないけれど、もう、彼の面影を思いだして泣くこともないだろう。

彼の為に生きようなんて、そんな誓いもたてない。
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