ナツメ
愛されてはいけない、なんて二度と。

二度とそんな呪文は唱えないし効かない。


願うことを覚えたもの。
愛される為に願うこと。
愛されたいと願うこと。


車が減速する。
カチッカチッとウィンカーが鳴る。

お別れの音だ。

なにも言わずにドアを開けた。

決してナツメの顔を見ずに車を降り、後ろ手でドアを閉めようとして立ち止まる。

ドアは開いたまま。
中からナツメが閉めることもない。

目の前をたくさんの人が通り過ぎて行く。
足早に。
誰もわたしに振り向きもしない。
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