ナツメ
「…どうして…」

どうして! 

我慢していた涙が堰を切ったように溢れだす。


今日は六月三十日なんかじゃない。

まだサヨナラの日じゃない。

まだ五日もあるのに、どうして。

ナツメどうして。


ただただ子供のように泣いた。
捨てられた気がした。
もうお前なんか要らないと。

ナツメの気持ちがわからない。

わたしが、ちゃんと人間に戻れるようにと五日の猶予をくれたんだろうか。

いや。

そんなことしなくても、あの部屋をでれば、あの部屋から抜けさえすれば、わたしがすぐに現実に立ち戻れるとナツメはわかっていたはずだ。

だったらどうして?
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