ナツメ
一年前のあの日、サヨナラの日に届いていたメール。

その画面に向かって「ただいま」と笑顔で言うわたしは、やっぱりどこか少しイカレたままなんだろう。

心の支えだなんて言わない。

このメールを間違って消去してしまったら、切なさに咽び泣くなんて、そんなこともない。

ナツメに会いたくないと言えば嘘になる。
会えるものなら会いたい。

だけど怖い。

会おうと思えば、どんな手段を使ってでも彼の居場所を探しだして会うことができるだろう。

彼と過ごした部屋。
住所はわからないけど、間取りはよく覚えている。

それを手がかりに探すことは、きっと簡単だ。

だけどもう、ナツメはあの部屋にはいない気がする。
< 120 / 136 >

この作品をシェア

pagetop