ナツメ
わざと髪をちゃんと拭かずにリビングへと戻った。
洗いたての髪から冷たい滴がポタポタと足元に落ちる。

それを見てナツメが顔をしかめた。

タオルとドライヤーを持って、ナツメの傍へと歩み寄る。
慌てた所為で足について鉛がごろごろ転がってわたしの足首を叩いた。

だけど痛みなんて感じない。

無言でナツメにタオルとドライヤーを差し出した。

眉を吊り上げてわたしを見る怪訝そうな顔。

「乾かしてください」

「…自分で、できるだろ」
「できません。ペットだから」
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