嘘つきlullaby
「あのさ、萌黄」
「付き合ってくれる?!」
「俺はアンタのこと何にも知らないんだけど」
「私も知らないけど?」
またもや平然と答える萌黄。
愛多は流されちゃダメだと自己暗示し、気をとり直して言った。
「友達から始めるだろ、普通」
「友達から?」
「まあ、お互いの事知ってからじゃないのってこと」
「ああ!」
今更何を納得したのか、萌黄はぽんと手を叩く。
そしてキラキラした笑顔でこう言い放った。
「じゃあ明日から私たちは友達だよ!」
「え、あ、うん」
「よろしく、カナちゃん!」
「カナちゃん!?」
「じゃあバイバイ! また明日!」
「ちょっ、その呼び方――って……もう居ないし、」
嵐のように去っていった萌黄の後ろ姿を見て、愛多は一息つく。
そしてまだ混乱している頭のまま、愛多は踵を返したのだった。